★中学社会科における「文化」の取り上げ方の変容及び今後の学習の仕方の展望

★中学社会科における「文化」の取り上げ方の変容および今後の学習の仕方の展望

何十年か前は高校の「現代社会」の教科書やその教師用指導書及び中学の教科書などにおいては「文化」を一つの観点から「精神的文化」・「制度的文化」・「物質的文化」の3つに分類がなされる傾向があったようだ。「精神的文化」には、宗教や科学などが含まれ、「制度的文化」には法などが含まれ、「物質的文化」にはいわゆる物質文明が含まれような記述があった。

しかるに、最近の社会科とりわけ「公民」においては「文化」をめぐる問題は、「多文化共生」といういかにも現代国際社会におけるアップツーデートな社会諸問題を反映している脈絡の中で取り扱われている感が強い。

さらに、日本国内における各地域の伝統文化である祭りや食生活などが「地理」や「公民」の教科書で紹介されている。

「歴史」に目を転じると、各時代の文化についての記述が写真などの資料とともにその特徴が記載されている。いわゆる文化史をめぐる叙述である。

このように見てくると、同じ社会科における文化の取り扱い方もかなり広範な分野にわたり、学習する生徒にとっても教える側にとってもやや抽象的な概念に感じられるのではないか?

もっとも学問的には文化人類学や民俗学等の関連諸科学があり、とりわけ文化人類学においては「文化概念」をめぐっては諸説があり、論争すらある。

そこまで深入りせずとも、社会科一般として再度、「文化」の個別的具体例のみならず、「文化」とはそもそも何かということを体系的に捉え直し、そのテーマを生徒とともにさまざまな観点から総合的に考え直す必要もあるのではないか?

文化とは過去から現在まで我々人類の持ち続けた生活と切っても切れない密接に関わりをもつ極めて重要なテーマである。そうだとするならば、それは、とりもなおさず、「地理」・「歴史」・「公民」の個別の科目でその具体例のみを学習しさえすればよいものでなく、社会科一般の中で取り扱うべき共通のテーマと考えるわけであるが、いかがなものか?