◆小5算数「円」をめぐって思うこと

◆小5算数「円」をめぐって思うこと

円周と直径の関係について、実際にいろいろな大きさの円についてはかってみることもその関係をつかむ上で大切だと思われる。

とかく、円周は直径のおよそ3.14倍であるということを前提に問題を解かせる場合がほとんどだと言ってもよい。(※学校や塾においては実測させて丁寧にやっているところもあるであろうが…)

半径や直径が所与のとき円周を求めさせたり、逆に円周が所与のとき半径や直径を求めさせる問題を機械的にやらせることはたやすいことでもある。(※後者の場合はやや戸惑う場合があったとしても)

ここで言おうとしているのは、その前に、そもそも円とはどのようなものであり、円周と直径はどのようにはかったらよいかを生徒といっしょに考えてみるのも面白い。

以下に述べることは、数年前に当塾で行った授業例である。

さまざまの円を表すものとして、大きさの違う筒を集めてみる。まずその円周の長さをはかるには、どうすればよいかを考えさせてみる。生徒の中には、糸をつかえばよいのではないかという子も出てくる。実際に円柱の筒のまわりを糸で巻いてみると、引っ張り具合によってはのびてしまい、それを定規に合わせて長さをはかってみてもその時もさらにのびてしまう関係で、その結果は、まちまちである。中にはセロハンテープでやったらどうかという意見も出てくる。こちらの方は、貼り付けていくので、糸のようなテンションがかかりにくいせいか、値がほぼ一定している。そういうわけで、円周の測定結果はまず良いことにして、次に直径をどのようにはかるかということをみんなで考えてみる。ある子は、弦のうち最長のものが直径になるということを学校で習っており、一番長そうなところを定規ではかっている。こちらで、「もっと正確にはかる方法はない?」と水をむけると、じっと考え、しばらくして、二つの三角定規と定規を持って来て、友達となにやらやっている。

そのうち、定規に二つの三角定規を垂直にあて、平行線を作って、その間にはかるべき筒を挟み、直径をはかる魂胆らしい。

ここで、こちらがいかにも驚いたリアクションをして感心すると、彼らの目がキラキラ輝いている。

あとは、みんなのノートに【円周】・【直径】、そして【円周÷直径】の欄を書いた表を作らせ、それぞれのはかった値を入れさせる。割り算の計算値が違っている場合は、友達どうし教えあっている。

多少の誤差はあるが、幸いなことに、円周÷直径の値は、ほぼ3にはなった。そこで、「円周÷直径ってどんなことなの?」と聞いてみる。すると「先生、円周が直径の何倍かということ?」「うん。そうだね。」すると別の生徒が「もしかして、それって円周率のことじゃない?」「はい、よくできました。」

 

最初から、公式のように与えられたものとして計算をすることの無味乾燥さと比較してみると、限られた数のものでも実際に計測して生徒が実感するということもおおいにあるような気がする。

生徒の中には、直径が異なる円において、いつでも必ず、直径の約3.14倍が実感として円周になるとは思っていない子もいても自然である。

その意味でも、実際にやってみることの意義はあると考える。

円周率の意味がよくわかり、

それを測定する方法、表にそれぞれの項目を表し、それを分析することにより、実感として円周率が常にどんな大きさの円において同じであることがわかるのである。さらに副産物として、直径をはかるときに二つの三角定規と定規から平行をつくる復習もできるのである。

さらに、円周と直径の関係が意味の上からしっかりわかっていさえすれば、円の面積の公式と混乱する等ということはずっと減るのである。

もっと、混乱をなくするためには、小学生にとっては、やや飛躍することになるが、円の面積の導出過程をきちんと再現することが出来さえすれば、良い気がする。

ただ、円周のだし方、円の面積のだし方を丸覚えするだけでは、ちょっと…という感じがするのが、今の私の正直な気持ちである。

とかく、こういう時間は無駄であるという意見もあろうかと思うが、これからの社会では、与えられたものをただその公式に当てはめさえすれば結果が出てくるとする思考様式だけでは通用しなくなるのでは、…。機械がみんなこんなことは代替してくれるからだ。

そんな不安は考えすぎであれば良いのだが…。