◆最近の中学の実質的授業時間数の傾向についての若干の懸念(※あくまでも私見)

◆最近の中学の実質的授業時間の傾向についての若干の懸念(※あくまでも私見)

はじめに、言っておかねばならないことがある。

以下に述べることは、あくまでも、厚木市および清川村のほんの一部の公立の数校における当塾生の通ってる公立学校に限ったことであり、その他の私立中学や当塾生以外の通っている厚木市、神奈川県及び全国的にその実態を調べたものではない。したがって、全体から見て極めて限られたごく少ない中の一例に過ぎないので、これは、あくまでも私の感想といったものであると考えてほしい。

さて、前置きはこのぐらいにする。

前にもこれに関する傾向は述べたが、そのときから、さらに数ヶ月過ぎたので、ここでもう一回この時期に触れておくことは今後の学習指導のあり方にとって、少なからぬ意味があることと考える。

まず、今年度は去年と比べて、定期テスト(中間テスト・期末テスト)がなくなった学校が増えた点である。それとともに、いや、それだからこそと言った方がよいかもしれないが、こういった学校では、去年以前と比較して明らかに、通常の授業内で実施する小テストおよび単元テストの頻度が増しているように見える。

次に去年同様に定期テストを実質している学校においても、上記に分類できる学校と類似して単元テスト・確認テストとしての小テストを実施する頻度が増えてきている傾向がある。

その事自体は決して悪いことではない。細かく学習内容の理解度をチェックすることは、今後の教師の指導に活かす上に、また、そのことによって改善された授業のあり方が生徒にとっても必要となるからである。

さらに、ここで触れなければならない点がある。それは、いわゆるある程度の範囲の理解度を客観的にはかるものとしての各学校で行う実力テストである。学習塾等で行う志望校判定テストとは、厳密にいえば異なるものであるが、見方によっては、客観的な実力を把握するという観点からは類似していると見えないでもない。(※小6や中3のみが行う学習状況の把握のための全国的な共通テストとは違う。)

こういったテストを通常の授業時間に行うのである。

そこで、一部の定期テストの行わない学校の5教科(英・数・国・理・社)に限った単元テスト・小テストの年間予定表(※生徒のもの)を見せてもらった。教科ごとにすべて詳細に記載されている。教科間に多少の違いがあるが、かなりの頻度である。

実際、今年度から初めて定期テストを廃止した学校の生徒の中には、こんなことを言ってくる生徒がいた。

「先生、去年と全然違うよ。しょっちゅう学校でテストをやるもんだから、毎日勉強しなければならなくて、たいへんなんだよ。わかる?」

「わかるよ。だって長い目でみれば、学習習慣が身につくし、君にとっても、いいではないか?それに、定期テストがないんだろう?その分、他の定期テストがある学校よりいいではないか?(笑い😙)」

しかし、そのように言ったには、言ったが、ちょっと考えてしまった。

定期テストを実施する学校(※確認のための小テスト・単元テストは昨年よりずっと増えているし、実力テストも行う)もしない学校(※上記の学校と同様に単元テストや確認のための小テストも相当の頻度で実施し、客観的な学力をはかるための実力テストも行なう。)も4月の時点と比較して授業のスピードが早くなってきたような気がする。これは、昨年以前の数年(※単元テストや小テストの頻度がそんなに多くない時代)と比較してもいえるような気がする。

これは、もしかしたら、次のようなことが言えるのではないか?と、はたと、考えてしまったのである。

頻発に行われる確認テストとしての小テストや単元テストに費やされる時間数を年間で合計すると、定期テストを行なう学校もやらない学校も物理的にいってかなり増えており、総計すると相当な時間数になるのではないか?

そうかと言って、予め決められた授業の年間計画による予定の割り振りを変えるわけにはいかないのである。

小テストや確認テストや単元テストも授業の形態の一部として含まれているので、なんら問題がないではないかという意見が確かにあるだろう。

しかし、こういったテストに割かれる時間と本来生徒が初めて学習し、その内容を十分理解するには丁寧に時間をかけ、順を追って説明をする必要があり、また、十分な学習事項の反復練習も授業で行うことが望ましいのは、教師なら十分承知しているはずである。生徒がその学習事項を定着するには、自学も必要であろうが、ある程度の学校での時間数は必須と考える。

そんな中、この小テストや単元テストの物理的な時間で割かれ、そのことが通常の学習すべき時間数の減少に、万が一、つながるとすれば、その実態を再調査し、もう一度、通常の授業数の確保をはかることは決して無駄なことではないと考える。

そうでないと、学習面において、生徒が消化不良を起こすのではないか?

現在中学校では、教科書を補ぎなうために副教材(※学校によって違う場合も多々ある。)が与えられている場合がある。もちろん自学自習用にしている場合もある。

ただ、生徒がその問題集のどのくらいをやっているのかを見てみるのも、たまには必要ではないか?(※単に学校への提出がいつまでと言うことではなく)

中には熱心にプリントを手作りでされて、授業で使われている先生もいらっしゃるようである。

とにかく、頻繁に行われるテストが、テストのためのテストになるのではなく、生徒が初めて学習する内容を興味をもって理解するにはその授業に最低限必要な時間数を確保することは、特に大切なような気がする。このごく当たり前のことがこの時代案外忘れられているのではなかろうか?

これが、私のただの思い込みによる誤解であるのならよいのであるが…。

(※注)

私は確認テストや単元テストを決して批判しているわけでない。さらに、定期テストをなくすということによる実験的な試み(教育制度の非常に細かな改革ともいえる。)やそのことに合わせる学校のあり方も、けっこうだと思う。

ただ、その他の頻繁に実施されるテストによって削減されるかもしれない物理的な通常の授業時間数の減少と生徒の理解のあり方の関係にも注目してもらいたいというささやかな提言である。