★中2数学「連立方程式の利用」の【解の吟味について】
◆解法の手順の中で普段とかくなおざりにされていること!
(1)
今年度の教科書、啓林館の『未来へ広がる数学2』は49ページにおいて、1年生で学んだ方程式の解法の手順をふりかえりとして挙げている。
「方程式を使って問題を解く手順
1.問題の中の数量に着目して、数量の関係を見つける。
2.まだわかっていない数量のうち、適当なものを文字で表して、方程式をつくって、解く。
3.方程式の解が、問題にあっているかどうか調べて、答えを書く。」
そして、この手順と同じように考えて、連立方程式を解く旨を示している。
また、昨年度の教科書、学校図書の『中学校数学2』の55ページにおいては、重要点として連立方程式を利用して問題を解く手順として、次のように記載されている。
1. 問題の中にある、数量の関係を見つけ、図や表,ことばの式で表す。
2.わかっている数量、わからない数量をはっきりさせ、文字を使って連立方程式をつくる。
3.連立方程式を解く。
4.連立方程式の解が問題に適しているかどうかを確かめ、適していれば問題の答えとする。」
(2)
上記で取り上げた啓林館の教科書からの引用の3と学校図書の教科書からの引用の4は、いわゆる「解の吟味」に当たるわけであるが、近頃は、ほぼ連立方程式の利用においてその問題にあった解が出るというのをはじめから前提にしてしまっているかのように指導する教員も中にはいらっしゃると思われる。
その結果、生徒自身もこの「解の吟味」がある意味では形骸化されてしまって、特に意識しない傾向があるような気がしてならないと考えるのは、私だけであろうか。
この点は、中3で学習する二次方程式の利用においても同様な傾向がみられるというのが率直な私の実感である。
そこで、ずいぶん前の数学の教師用指導書が手元にあったのでそのことについて、再度確認することにしてみた。
(3)
この教師指導書は教育出版の教科書『改訂中学教科書2』用に作られたものであるが、残念なことに出版年は記載されていなかった。(※何しろ、中2で「連立不等式」や「相似」を扱っているくらいであるから相当以前のものということは確かである。)
(4)
同書の100ページに、連立方程式を利用して問題を解くとき、求めた連立方程式の解が問題に適さない例として次のような問題が載っていたので、この点の注意を喚起するうえで参考までに以下に挙げておく。
(5)
「例2.
2けたの自然数がある。その各位の数字の和は10である。
また、十の位と一の位の数字を入れかえた数は、もとの数より9小さくなるという。もとの数を求めよ
う。」
[1]十の位の数字をx、一の位の数をyとする。
[2]1.(十の位の数)+(一の位の数)=10
2.もとの数は10x+yで表せる。
入れかえた数は10y+xと表せる。
(入れかえた数)=(もとの数)―9
1.の場合 x+y=10
2 の場合 10y+x=10x+y―9
[3]1.と2.の方程式を組にした連立方程式を解くと、
x=11/2
y=9/2となる。
[4]どの位の数も9以下の自然数でなければならないから、十の位の数字が11/2、一の位の数字がは9/2は、問題に適さない。
したがって、答 問題に適する数はない となる。
(6)
このような、問題をやることによって解の吟味の意味の大切さがわかるのである。
したがって、連立方程式だけでなく、一次方程式や2次方程式においても解の吟味の必要性をその都度、生徒に十分理解させることは中1・中2・中3の数学の指導にないがしろにできない大事なところであると私は常日頃考えているのだが、いかがなものであろうか。