★中2数 【連立方程式の利用】における立式までの過程
[教科書p.57(6)の問題]と「そこはかとなく思うこと」
(※注)教科書は、啓林館『未来へひろがる 数学2 みんなで学ぼう編』
(1)
生徒にとって速さ・時間・距離の関係を丁寧に確認し、それに基づいて自ら図示し(本問では初めから図が載っている。)、その図に自分で丁寧に書き込み、それらの関係をはっきりと自分の目でいちいち順序だてて確認していくことがどうしても必要になってくる。
そして、本人がわかった段階で、それらの関係について式にあらわす習慣をつけさせることが大切である。
では、さっそく中2の数学の教科書のp.57の[6]の問題を見てみる。
「6.ある列車が、1260mの鉄橋を渡りはじめてから渡り終わるまでに、60秒かかりました。
(※図省略)
また、この列車が、2010mのトンネルにはいりはじめから出てしまうまでに、90秒かかりました。
この列車の長さと時速を求めなさい。」
以上が問題である。
以下で立式までの途中経過について触れておこう。
まず、何をxと置き、何をyと置くかだ。
聞いているものそのものをx、yと直接置くのではなく、それに関係する量を置いたほうが式を立てやすい場合もある。
いわゆる、去年、今年の増減の問題などがこれにあたる。すなわち、今年の人数を聞いているにもかかわらず、去年の人数をx、yと置くといったような場合である。(注※こっちのほうが立式がしやすく、しかる後に出たx、yから今年の人数を求めるという手順でやる、ということである。)
しかし、本問では、特にその必要はない。
列車の長さをxm、列車の速さを秒速ymとすると、(※時間の単位が秒になっているので、秒速にしておいたほうが式を立てる場合、容易である。しかる後に秒速を時速になおせばよいのである。ただしkm/時という単位については、生徒自身十分気を付ける必要があることはもちろんのことである。)
(※注)列車の時速そのものを時速ykmと置かないところからすると、この点に関してはそれに関係する量(秒速ym)をyと置いたとする上の見方も当然できるのである。
問題文の前段の2行について距離の関係式をつくると(※距離=速さ×時間なので)
1260+x=60y…[距離についての関係式である]
後段の2行についても距離の関係式をつくると(※距離=速×時間なので)
2010+x=90y…[距離についての関係式である。]
これら二つの式を連立させ、この連立方程式を解くと
(x、y)=(240,25)となる。
よって、列車の長さは240m、
列車の速さは、秒速25mだから時速に換算して
時速90kmとなる。(※m/秒をkm/時になおすには、
60×60[時間を秒になおすため]をかけて1000[mをkmになおすため]
で割ればよい。)
(2)
この問題をふりかえってみる。
もし、学校で、クラスのみんなが完全に理解させるまでには、相当、時間がかかるような気がする。
その理由として、
1.問題文の「鉄橋を渡りはじめてから渡り終わる」、同じことだが「トンネルにはいりはじめてから出てしまうまで」とは、一体どういうことなのか?をきちんとわからせる必要がある。前者ついては絵が載っているので理解はたやすいかもしれないが、後者については絵がついていないので、わからない生徒には実際に自分で図を書かせて実感を持たせ、それが、どういう状況なのかを本人にわからせたい。(もし、具体性を持たせるためには黒板消しなどを列車に見たてて、透き通るトンネルに見立てたものの中を動かしてみるのも一つの方法である。)
2.小学校時代に速さ・時間・距離の関係がきちんと理解されていない生徒がいたら、そこからもう一度戻ってやり直す必要がある。
ただ、単に「ミ・ハ・ジ」だとかいう機械的な覚え方に当てはめるだけでなく、速さが単位あたりの量の一つであるということを理解させたい。
そのうえで、実際に、速さや時間や距離を実際の具体的な数字で計算させることによって、二つの量がわかれば、残りの量もわかるということを生徒自身に時間をかけてじっくりと理解させたい。
3.単位の換算、特に速さにおいて秒速や分速や時速も(m、km等も含めて)自由自在に換算出来るような練習も必須である。
少なくてもこれらの基本的なきちんとした理解がないままに本問題を生徒自身が解くことは、問題そのものを丸暗記でもしないと、なかなか得点できないと考えるがいかがなものであろうか?
丸覚えでたとえ、得点が取れたとして本質的な問題の理解にとってどういう意味があるのだろうか。
ちなみに、期末テストで連立方程式の利用においてこの種の問題も何題か出題する学校もあるのであろうが、それは、数学の教師が生徒にどこまでの理解を要求し、問題を出題するかの如何にかかっている。
当然、教師側も答案の出来具合によって自己反省し、生徒の解法の手順を基本から戻ってしっかりわからせるためにはどうしたらよいのかを再度組み立てなおさなければならないと考えるがいかがなものか。
しかし、別の見方をすれば、この問題を研究することにより、今までないがしろにしてきた分野の理解も同時に深まるという点おいては、十分な意味があるのかもしれない。
(注※)期末テスト対策の質問コーナーで生徒から質問があったので、解説の後、こころに浮んだ思い当たることをつい思いつくまま書いた次第である。