◆社会科の基礎をなす学問的背景に着目する意義
中学校の理科分野においては教科書の指導書を何年かのタームをとって比較してみると重きの置き方や学問的進展によってだいぶ様相が様変わりしてきており、そのことはある意味当然と言える。
例えば、環境生態学の分野において、以前は食物連鎖が中心に教科書に載っていた。もっとも当時から食物網の考え方は指導書の教師用の参考欄には載ってはいたが教科書そのものには載っていない時代もあった。近頃では食物連鎖のみならず食物網の考え方が教科書に載るようになってきた。
これは、単なる一例に過ぎないのであるが、社会科においては、どうであろうか?
例えば、経済の説明において、何十年も前の教科書では、生産の仕組みをマルクス的視点で説明しているものが多かったようである(※高校の政治・経済の教科書)が、近頃は全く違ってきている。
まして、社会主義的体制に対する記述についても、これは、何十年も以前は、私見であるが、あたかも増えていくようなニュアンスが感じられたものだ。
もちろん、世界の当時の状態や当時のある特定の分野の主流の経済学が現在とは違っているので、単純な比較することは必ずしも、フェアーとはいえないが、その箇所を記述している執筆者の学者の立場が色濃く反映されているようにも思える。
ここで、理科の学問的発展が教科書内容に反映されてきているのと社会科の内容のよって立つ基盤の変化が教科書内容に変化を与えるのとは、確かに共通した面もあるが、そうではない面もおおいにあるような気がするのは私だけであろうか?
それは、自然科学と社会科学の違った面も多分に影響を与えているように思うのである。
社会科の教科書内容が変わったという皮相的な点にのみに関心がいくのは分からなくもないが、どうして、そのように扱う内容が変わったかの背景についても知る必要があると思われる。(※もちろん文部科学省が出している指導要領の改訂のねらいや目的を参照することも大切ではあるが…)
地理的分野においては、情報地理学的要素が十分入ってきており、データの空間的・時間的変化を定量的に扱う姿勢が色濃く反映されている。
自然地理学は気象現象などにみられる理科的分野との関連が大きい。
歴史的分野においては、まず近現代が以前にもまして重要視されているように感じる。
ただ、どういう歴史観にたっての教科書の記述かという点を生徒には直接示さなくとも教師側は指導内容の把握だけではなく、少なくとも知っておく必要があると思われる。主な発展段階説ぐらいは知っておいてもよいのでは?
さもないと上述したような教科書の経済における説明の仕方の歴史的変遷と同様なことになるだけでなく、子供にとって歴史を学ばせる意義を養う態度に翳りが出てくるのではないか?
公民的分野においては、教科書にはアップトゥーデイトな問題も多岐にわたり載っている。国際問題など時事問題に関心をもたせることも必要になってくると思われる。
ただし、公民の骨格とも言える、現代社会の特徴と日本国憲法と経済の学習においては、少なくとも歴史で学習した資本主義や帝国主義の学習に立ち返る姿勢は特に見逃せない視点である。
人権については、近代の啓蒙主義の思想家の思想がいかに市民革命に影響をあたえたか?という点もないがしろにできない大切な箇所であると考える。
長くなり過ぎてしまったのであるが、社会科の基礎の学問的背景について、私もさらに詳しく着目して研究していくつもりである。それを
授業に活かしていきたいと思う。そのことが生徒に社会科に少しでも興味を持つだけでなく、広い視野を持ってほしいと考えている。