★中2数学【濃度に関する問題】[連立方程式の利用]について、そして思うこと!

★中2数学【濃度に関する問題】[連立方程式の利用]について、そして思うこと!

濃度に関する問題を基礎的問題[1]とやや複雑な問題[2]の2問についてだけ見てみる。

解法の手順の参考にしてほしいからである。

[1]

PとQの2種類の食塩水がある。Pの食塩水を200gと

Qの食塩水100g取り出して混ぜると7%の食塩水になり、(ァ)

Pの食塩水を100gとQの食塩水を200g取り出して混ぜると

11%の食塩水になる(イ)という。PとQはそれぞれ何%の食塩水か。

[※注『未来を切り開く学力シリーズ 中学数学発展編入試対策』橋野 篤著 株式会社 文藝春秋 2005年 P.65より問題文引用、筆者が下線部と(ア)(イ)を追加した。]

【解答例】

まず、Pの食塩水の濃度をx%、Qの食塩水の濃度をy%とする。

(ァ)より、食塩量に着目すると、

200×x/100 +100× y/100=300×7/100

この式をさらに計算して簡単にすると

2x+y=21…〈1〉

(イ)より、やはり食塩量に着目すると

100×x/100 +200×y/100 =300×11/100

この式をさらに計算して簡単にすると

x+2y=33…〈2〉

〈1〉と〈2〉を連立させて解くと

x=3,y=15

よって、Pの食塩水の濃度3%、

Qの食塩水の濃度15%

 

[2]

容器Aにはx%の食塩水が600g、容器Bにはy%の食塩水が

300g入っている(ア)。

容器Aから食塩水300g取り出し、容器Bに加えて混ぜ合わせた(イ)後、

容器Bから食塩水を300g取り出し、容器Aに加えて混ぜ合わせる(ウ)という操作を行う。

 

【1】以上の操作が終了したとき、容器Aに含まれる食塩の重さをx、yを用いて表しなさい。

【2】以上の操作が終了したとき、容器Aの食塩水は12%、容器Bの食塩水は、10%であった。x、yの値を求めなさい。

 

〈(※注)一昨日の授業終了後、生徒から突然質問があった。上記の問題は、どうも学校でやった問題らしい。私自身問題は見せてもらったが口頭で急いで聞いたせいもあるので、うる覚えで果たして、出題者が本当にこのような表現をされているのかは、どうも自信がない。また聞きだからである。でも恐らく、私の記憶によれば、だいたいそんな内容であったような気がする。そのへんの事情は事前にお断わりしておかねばならない。なお、下線部及び(ア)(イ)(ウ)は筆者が追加した。〉

 

まず【1】の問いから見ていくことにする。

本日の一番最初の問題[1]と同様に食塩量に着目してみる。

(ア)の状態における

容器Aの食塩量は

600×x/100 =6x(g)

容器Bの食塩量は

300×y/100 =3y(g)

 

次に、(イ)の状態における

容器Aの食塩量は(ア)の状態の半分の量なので

(容器Aの食塩水のうち半分の量の300gをBの容器に移したので)

6x× 1/2=3x(g)

Bの容器の食塩量はもともとあった食塩量の3y(g)と

Aの容器から移した300×x/100 =3x(g)をあわせたものであり、すなわち3x+3y(g)である。

 

最後に(ウ)の状態においてみてみる。

Bの容器から300g取り出し、容器Aにまた、もどすというのだから、このBの容器からAの容器に移した

食塩水のうち食塩にだけ着目すると3x+3y(g)の半分すなわち(3x+3y)/2 (g)移したことになる。

ところで、容器Aにもともと残っていた食塩量は

6x×1/2 =3x(g)

よって、(ウ)の状態における

容器Aに含まれる食塩の重さをx、yを用いて表すならば、これらを足して

(3x+3y)/2+3x

= (3x+3y)/2+6x/2

=(3x+3y+6x)/2

=(9x+3y)/2

よって、以上の操作が終了したとき、容器Aに含まれる食塩の重さは、 (9x+3y)/2(g)

 

最後に【2】の問題に入ろう。

(ウ)の状態において、容器Aの食塩水は12%、

容器Bの食塩水は、10%であったので、

やはり食塩量に着目して式を立てると、

容器Aの食塩量についての式は

(9x+3y)/2=600×12/100 …〈1〉

容器Bの食塩量についての式は

(3x+3y)/2=300×10/100 …〈2〉

 

〈1〉は

      (9x+3y)/2=72

両辺を2倍して

       9x+3y=144

              両辺3で割って

       3x+y=48…〈3〉

〈2〉は

       (3x+3y)2=30

両辺を2倍して

 

       3x+3y=60

       両辺を3で割って

       x+y=20…〈4〉

〈3〉と〈4〉を連立させて、連立方程式を解くと

   x=14,y=6

よって、(ウ)の状態においては、

容器Aには14%の食塩水が600gが、

容器Bには6%の食塩水が300g入っていたことになるのである。

 

[3] 

これら[1]および[2]で扱った問題は、ともに食塩水の中の食塩の量に着目し立式するという点が大切な点である。

特に[2]のような問題は、それぞれの状態すなわち、(ア)、(イ)、(ウ)の状態に分けて、順を追ってきちんと考えていけばよいのである。

ただ、中2の生徒がすべて自力で解けるかというとなると、はなはだ疑問であると考えるのは私だけであろうか?

連立方程式の利用に関しては、基本的問題の出題をしてみて、その結果をもってして、まずは生徒の理解の定着度をはかるというのも一方法ではないか?

もっとも、この種の問題をテスト問題ということにして生徒の学習の取り組みの評価に組み入れるのは出題者の自由であるが、あらかじめこの種の問題の意味の理解とその解法の手順の練習を十分に行っておいてから出題しても遅くはない気がする。

テストのこの問題が全く解けない生徒の場合、どうしたらいいのか。

途方に暮れてしまう場合も想定できる。友達と相談しながら考えていく教育効果をはかるというのもわからぬではないが、万が一、テスト後の評価に加えるとなると、どうであろうか、という気がしないでもない。

ただし、これは、私自身の早とちりと誤解なのかもしれない。

教師の立てた教育方法と教育目標と教育評価はある程度その教師の自由裁量にまかされているのでわたしごときが,とやかく言うべきことではないのかもしれない。

「ただ公教育となると……。」とついつい思ってしまうのである。

私自身ずいぶんと古いカチカチ頭なのかもしれない。

 

(※注)食塩水の濃度の問題は、理科的に考えると飽和量を超えない範囲で考えるべきであり、なおかつ食塩水の水溶液は均一ということが前提されており、さらに違った濃度の食塩水を混ぜた場合も時間がたてばやがて均一になるということが暗黙知とされているかもしれないし、また一方で、この中に溶けている食塩の量は理論上は計算によって求めるのが可能であるが、現実的に考えると、食塩水という世界と食塩量という二つの世界が混在してくると生徒にとってなかなかきちんと整理がつかない、かなり抽象度が高いものとも考えられるのである。そういったことがこの種の問題に対して生徒にどうしても苦手意識を持たせてしまう一原因となっているのかもしれない。そんなわけで簡単で単純な問題からできるだけゆっくりと段階的に難易度をあげて問題に慣れさせていく必要があると考えるが、いかがなものであろうか。