★授業の方法

 

★授業の方法

(1)

アメリカの旧制度主義者の一人J.Rコモンズは、かつて自分が教えていた大学において、初めのうちは、大学の指導者がよく行っていた体系的な方法で授業をした。

ところが、学生の反応があまりよくなかったので、現在関心のもっている問題に焦点をあて、授業を行ったそうである。

実際に施設等に学生を連れて行き、生の情報を見せ、触れさせたそうである。

(2)

最近、「反転学習」というのが、アメリカに端を発し、世界でも日本でも実施されているところもあるようだし、そのような方向に舵がとられているようだ。

いわゆるアクティブラーニングの延長線上にあるようだ。

これ(「反転学習」)は、『通常の「教師による授業→宿題』という形態から『宿題→授業』という、大雑把にいえば、反対の授業ともいえる。

さらに、この学習の仕方はコロナ下での授業数減少が期せずして助長するかにも見える。

この方法は、「あらかじめ渡された課題について生徒自らが学習意欲をもって積極的に予習の学習をすすめていくという点」や「あらかじめわからなかったところを別の後の授業の中で、教師を含む生徒たちみんなで話し合い議論を深めて理解していくという点」や「教師が生徒一人ひとりの理解度を把握しやすいという点」などのメリットもあるようである。

実際この学習方法によって学習の効果の効率が上がったという統計的研究成果も数値でも出ている。

しかし、小学校の低学年や学習意欲の低い生徒にとっては、なかなか難しいという指摘もある。

ずっと画面を見つめるために眼が悪くなるのではという不安も指摘されている。

もちろん、ICT教育の普及がその前提にあることは確かである。

確かに、活気的な試みではあるかもしれないが、教科ごとに細かくあらかじめ、どういうデメリットがあるのか?ということをしっかり把握せず、見切り発車的に一斉に実施するのはいかがなものかと私は思う。

全く新たな学習事項を各自で調べ予習の学習ができるような場合は、教科によってはあるかもしれないが、数学や理科の実験などの場合は、多少問題が出てくることもおおいにありうることだ。

さきほどの(1)で触れたように、体系的学習とアップトゥーデイトの問題の学習とでは、とかく生徒は後者に関心を抱く傾向がある。

これは、いわずもがなのことであるが、その一方、体系的学習の必要性があることは明白である。

特に積み重ねの教科学習にとっては、一字一句の言葉の定義からはじめ、その理解すべき学習項目は、段階的になっており必ずしも、生徒一人ひとりが自学で理解できるかと言うと甚だ疑問であり、もしわからないところに遭遇したとき、その場で教師による解決ができず、タイムラグが生じるとあまり好ましい状態にならない可能性も十分出てくる。

こういったことを考慮に入れると、今まで実施してきた通常の授業にも捨てがたい面があると同時に体系的理解という非常に大切な学習のコアがあることは確かである。

反転学習と通常の学習との間でよく吟味し、それにあった形で授業を組み立てる必要を切に感じる。

しかし、これは「言うは易く行うは難し」ということに成りかねないのも真理であろう。