◆中1数学と中2数学と中3数学との関連の重要性

◆中1数学と中2数学と中3数学との関連の重要性

ここでは、図形の2点のみ挙げる。

まず、中1の作図でいわゆるもっとも基本的なものの一つとして角の2等分線がある。

分度器を使わないコンパスと定規だけの作図については、その作図の仕方だけを習う。

しかし、なぜ、それが、必ず角の2等分線になるかということは、実際に分度器で測ってみるだけでは必ずしもすべての場合ついて言えるとはいえない。

「なぜそうなるのですか?」と生徒に聞かれたことがあった。

何年か前に中1の生徒からその質問があったので、「そのこと(角の2等分線の証明)は中1の学年末テストには出ないと思われるので、とりあえず、作図できるようにしておくとともに、その考え方を使って、少なくも45度、30度、15度、75度ぐらいは作図できるようにしておきなさい。」と言った。

ところが、どうも不服そうな顔をしているので、授業後に残して(※もちろん保護者には事前に連絡済み)三角形の合同条件の説明から入り、そのうちの「三組の辺がそれぞれ等しい」ということを使って説明した。(※もっとも中1だったので証明の詳しい記述まではあえてしなかったが…)

中1では未習事項だったので、けっこう時間がかかってしまったが、その理屈がわかったせいか、生徒に笑顔がもどった。

それで、ようやくこちらも安堵した次第である。

それからはというもの、中2の三角形の合同の証明の最初の授業では「なぜ、中1の角の2等分線はあのような作図の仕方でそうなるのか?」と考えさせ、聞いてみることにしている。

ところで、昔は、円周角と中心角の関係は、中2の教科書で取り上げられた時期もあったが、現在では、中3で扱うことになっている。

「なぜ円周角は中心角の半分になっているの?」と中3のクラスで聞いてみると、学校のテストでは常にかなり高得点をとっている生徒でさえ、一瞬、とまどうようである。

そこで、中2までもどって、「二等辺三角形の2つの底角は等しいという定理」と「三角形の外角はそれと隣り合わない2つの内角の和に等しいといういわゆる外角の定理」を使ってそのことを証明するはめになる。

すると、生徒は分かったという顔をして安心している。

円周角と中心角の関係を所与のものとしてそれらを使って角度を求めることは、ゲーム感覚で楽しくやるのであるが、なぜそのような関係(中心角=2✕円周角)が言えるかということになると、ハッキリ言ってあやふやな生徒がいるのである。

定理に当てはめて角度を計算したり証明したりすることは得意なんだけれど、また、そのことが学校のテストに出る傾向が強いので、逆に言えば定理そのものはあまり出題されないという傾向があるので、そんなことをやっても無駄だと考えている向きもあるかもしれない。

しかし、定理である以上、証明されなくてはならない。定義と違い、それこそが定理というものである。

そこで、意地悪ではないが、さらに、「わかった!」と安心してうなづいている生徒に向かって、さらに聞いてみることにする。

「では、なぜ二等辺三角形の2つの底角は等しくなるの?そして、三角形の外角の定理はなぜ成り立つの?証明できるかい?」と聞くと、今度は、中3の意地か、こちらで配った白紙に向かって真剣に考えている。

こういう一見無駄なようなことを授業で行なうと、実は図形の証明の基本的な事項の総復習の一つになるのである。

中1でやることは中1、中2でやることは中2,中3でやることは中3などと切り離して考えてしまう最近の傾向には、多少の不安がある。

ここでは詳しく触れないが、三平方の定理と円錐の体積との関連による融合問題や図形ではないが、関数における比例、反比例、一次関数、二次関数などの融合問題も学年をまたいで関連する学習事項であり、そのことが高校入試問題ともおおいに関係することは周知の事実である。

よって数学のような段階を踏み特に体系的な教科は学年をまたいだ関連認識とそのような姿勢で学習することも、とりわけ大切だと思われる。