【中3理科】親から子への遺伝における「形質」の用語をめぐって

【中3理科】親から子への遺伝における「形質」の用語をめぐって

理科の教科書の用語の変更は科学の発達の具合から例えば、グリセリンとモノグリセリドなど枚挙にいとまがない。

しかしそういった点とは別の観点からも用語の変更も在り得るのである。

その例として、ここでは親から子への遺伝における「形質」の用語の変更について.取り上げてみる。

今年度の中3理科の教科書『新しい科学3』(東京書籍・令和3年発行)第2章「遺伝の規則性と遺伝子」の中の

P.99に、「親から子への遺伝のしくみ~メンデルの実験」の項目内に次のような記載がある。以下に引用する。「メンデルの実験1では、子の代では両親の一方の形質だけが表れた。Aaという遺伝子の組み合わせをもつ子は、遺伝子aをもっているが、遺伝子Aが伝える形質(丸)しか現れず、遺伝子aが伝える形質(しわ)は、かくれている。対立形質の遺伝子の両方が子に受けつがれた場合(図5)、丸形のように子に現れる形質を顕性形質(優性形質)、しわ形のように子に現れない形質を潜性形質(劣性形質)という。」★2

注として★2が教科書につけられている。これも引用しておこう。「子に現れる形質を優性形質、現れない形質を劣性形質と呼ぶこともある。優性形質、劣性形質という用語は、その形質が子に現れるか現れないかという意味で使われており、その形質が優れているか、劣っているかという意味で使われるわけではない。」(同掲書・同ページ)

以前の教科書では、やはり、このような意味で、優性形質・劣性形質という用語のみが使われていた。

ところが、このように用語の変更をした背景には、どうやら日本遺伝学会が2017年の9月の提案があるようだ。同教科書の注にあるように形質が劣っているか・優れているかという誤解をないようにするためのようでもある。

この点をめぐっては、白鴎大学教育学部の山野井貴浩・井澤優佳・金井正氏の『日本科学教育学会研究会』研究報告 Vol.34No.3(2019)『中学生は優性劣性について誤った認識をしているのかー遺伝学習後の中学生1000人を対象とした質問調査の結果からー』の興味深い研究がある。参考までに、以下にその[要約]のみを引用しておく。

「[要約]日本遺伝学会は「優性」「劣性」の語の使用が、形質が優れているや劣っているという誤概念をもたらすと指摘し、「優性」を「顕性」に、「劣性」を「潜性」に変更することを提案し、それ以降も用語を変更する方向で社会は動いている。しかしながら、これらの用語を用いて遺伝学習を行っている中学生の認識は十分調査されておらず、どれほどの生徒が誤概念をゆうしているかについては不明である。そこで本研究は、栃木県内の公立中学校13校に通う、遺伝学習後の中学校3年生約1000名を対象に、優性劣性の認識に関する質問紙調査を行った。その結果、約7割の回答が優勢の形質を「集団中の頻度」を根拠に,約6割の回答が優性形質を「生存上の有利性」を根拠に選択されていたことが示唆された。また、これらの誤概念は多くの生徒の中で共存していることも明らかとなった。」

(追記)

感想:だいたい字の内容から推測はつくが、調べてみると、なかなか奥が深くとても勉強になった。

教えるときの参考にしようと思う。