★中学英語・【「文型」及び「新しい内容」について】

★中学英語・【「文型」及び「新しい内容」について】

 

(1)

ちょうど2年くらい前、正確には2019年7月3日に「中学英語における文型にまつわる問題」という題でフェイスブックに、誰も(本人も)読み返す気がしないようなきわめて退屈な2900字あまりのくだらないありきたりの文を書いた。

(2)

そこでの内容は万万が一お時間がおありになって読んでみようという気になったとしたら実際にお読みになられるのが手っ取り早いが、こうである。

当時の「【外国語編】中学校学習指導要領(平成29年告示)解説」には、5文型という表現はしていないが、内容的には、SV、SVC,SVO,SVOO,SVOC(S:主語、V動詞、C補語、O:目的語)のいわゆる5文型に該当する叙述がある。

誤解がない点を願い、ごく簡単に言うと、この文型に関して文部科学省に対して再検討を要請している非常に興味深い例を見つけたので、今後の私の英語の指導の在り方におおいに参考になると思われたので、その根拠を含めたものとそれに対する当時の丁寧な文部科学省の回答について引用したのである。

その提案はこうである。端折っていえば、5文型を用いる指導法の撤廃である。

その根拠として以下を挙げている。

  • コミュニケーションを重視した英語教育を行う際に5文型は、あまり意味をなさない。基本的な文法事項のみをまずは理解してから英語を使ってコミュニケーションをとる方がより生きた英語力を手に入れることができる。
  • そもそも5文型とは英語を母国語にしている人たちにとっては、日本人である私たちが国語で用いる品詞分解のようなものであるので、英語力を十分にもっている人が更に理解を深めるために用いるものであるので、中学校英語の初段階で必須事項として、教えるものではない。
  • 実際英会話に用いる生きた英語はこの5文型に当てはまらないものが多々ある。
  • 先進国で5文型による指導を必須としているのは日本だけである。たとえば台湾と韓国は近年5文型の指導法を廃止した。
  • 中学校英語には、5文型を適用しなければならないような複雑難解な英文解釈はないので5文型を教え込む必要がない。

これらの理由により、教育指導要領の5文型をもとにした項目を撤廃すべきだとするのである。

私自身、これらの主張の根拠の事実関係を資料でいちいち調べたわけでもなく、到底そのような能力もないのは自分が一番わかっているので、おおまかにいうと、そういう流れかということでその議論の展開をなんとなくわかったつもりになったのである。(※決してすべてにおいて賛成しているというわけではない点は言い添えておこう。)

 

(3)

これに対して、文部科学省は次のように回答する。

「中学校学習指導要領(平成20年文部科学省告示28号)においては、第9節の第2の2の(3)のエの(イ)のa~fに文構造を示し、これらの文構造等を用いて、生徒に言語活動を行わせることとしています。このため、中学校における外国語科の指導に当たっては、3年間において、学習指導要領に定めるすべての文構造について、それらを用いた言語活動をすべての生徒が行えるよう指導を行なうことが必要です。

もっとも、中学校指導要領においては、これらの文構造をはじめとする文法事項の取り扱いについて、「用語や用法の区別などの指導が中心とならないよう配慮し、実際に活用できるように指導すること」を示しています。このようなことに配慮して、コミュニケーション能力の育成を図ることは、ご指摘の趣旨に沿ったものと考えています。

なお、学習指導要領の5文型を用いる指導法の撤廃というご要望については、制度の特例ではなく、地域の特性・ニーズに応じて特定の地域にだけ、全国一律の規制と異なる制度を認める、特区の制度趣旨に馴染まないものと考えます。」

 

(4)

当時(2019年7月3日)私は、上記の提案者の提案内容と文部科学省のそれに対する回答を読み比べることによって、過去の英語教育の在り方の変遷と今後のそのありうるべき方向性が何なのかということが垣間見ることができたような気がする、と書いたのを昨日のことのように思い出す。

(※注)なお、英語の文型に基づいた文法の指導は、是か非かは別にしても、我が国においては、多くの研究者が指摘しているようにかなり古いようであり、ある意味においては、伝統的とでもいえるかもしれない。

 

(5)

ひるがえって、今年の中3の教科書に新たに文法事項として、〈主語+動詞+目的語+動詞の原形〉が付け加わったということは周知のことである。

高校から降りてきた内容だからと言って、取り立てて大騒ぎすることでもなかろうが、とくに、make「~に…させる」、help「~が…するのを手伝う」、let「~が…するのを許す」「~に…させてやる」の指導は、初学の中学生には混乱の生じないようにいくつかの例文を挙げ、十分丁寧に指導していくつもりである。

とりわけmakeの文の使われ方の違いについてははっきりと生徒自身が弁別し理解できるように例文を挙げ、覚えてもらい、さらに簡単な英作文を行うことによって慣れさせることが大切であると考える。

 

(6)

これまで述べてきた5文型や〈主語+動詞+目的語+動詞の原形〉に関して、文法と教科書の本文についての関係について、私が24歳の高校で教えていた時、英語科であった校長が私に言ったことをなぜか思い出す。

彼は、当時の東京教育大を卒業され、もともとは県立の座間高校の校長をされていらしたそうであるが、中学校の英語の教科書の執筆者のひとりでもあった。(ずいぶんと前のことなので、記憶が定かではないが、確か、ニューホライズンの教科書であったと思われるが、何年に出版されたかまでは、はっきりしない。)

彼は、私に対して、こういうのである。

「君、教科書のそのセクションで学習すべき文法事項をそのセクションの本文に数多く入れると、本文が味気ないものになってしまうし、さりとて、本文を生徒にとって興味深いものにしようとするとなかなか単純な文法事項の典型的で簡単な例文のようなものは入りにくいんだ。そのジレンマに陥るんだよ。だから教科書も作るのはなかなか苦労するものだよ。」

英語が専門でない私にそんなことを言われたのを懐かしく思い出すのである。

これは、文法の体系的な学習は必要なことであるのだが、それだけでは、文法のための文法になってしまう傾向も出てきてしまうのであり、そうかといって、生徒自身にとって興味深い英文を数多く読めばそれにともなって英語の読解力もついてくると思われるのだが、その単語の数だけでなくその英語表現の理解にとっては、やはり振出しに戻ってしまうようであるが文法事項のきちんとした把握がやはり英文理解のかなめになってくるし、これらのことは、今日の英語指導の方法に大きくかかわってくるように思えるのである。

 

(※注)とりとめのない話になってしまった。(1)~(4)までの詳しい内容については、先ほども言ったように、2019年7月3日に私がフェイスブックに投稿した内容を参照されたい。