中1数学〈方程式の利用〉【追いつく問題】の教科書内容の比較から見えてくるもの

中1数学

〈方程式の利用〉【追いつく問題】の教科書内容の比較から見えてくるもの

 

方程式の利用の単元の【追いつく問題】の教科書記述内容の比較について以下で触れてみようと思う。

問題の表現の仕方の違いから出題の意図及び生徒に何を考えさせたいかの微妙な違いに気づくと思われるからである。

比較するのは教育出版『改訂中学教科書・教師指導書』(残念ながら出版年度は書いていない。おそらく20年以上前であると思われる。)と啓林館『未来へひろがる数学1』(令和3年度用)の2冊である。

 

◆まず教育出版のほうから見ていく。

教科書P.89(指導書P.139)

〈例3〉Aが学校を出発して4分後に、BがAを追って学校を出発した。Aの歩く速さは、毎分70mで、Bの歩く速さは、毎分90mである。Bは何分後にAに追いつくか。

 

〈考え方〉Bが学校を出発してからx分後にAに追いつくことにする。

図省略

BがAに追いつくということは、学校から歩いた二人の距離が等しいことである。それぞれのかかった時間は、

Aは(x+4)分、Bはx分

したがって、Aの歩いた距離は、70(x+4)m

Bの歩いた距離は、90xm

よって、70(x+4)=90x

x=14

答 14分で追いつく

 

◆次に啓林館の教科書を見ていく。

教科書P.104

〈例題3〉弟が2km離れた駅に向かって家を出発しました。

それから10分たって、姉が弟の忘れ物に気づき、

自転車で同じ道を追いかけました。

弟は分速80m、姉は分速240mで進むものとすると、

姉は出発してから何分後に弟に追いつきますか。

 

〈考え方〉

姉が出発してからx分後に追いつくとすると、

240x=80(10+x)

両辺80で割って

3x=10+x

2x=10

x=5

この解は問題にあっている。

答 5分後に追いつく

 

さらにこの問題にはさらに、次の問題が続く。

〈問4〉前ページの例題3で、

雨が降りそうだったので、弟が出発してから20分後に、

兄がかさを持って、同じ道を分速280mで追いかけました。

弟が駅に着くまでに、兄は弟に追いつくことができますか。

 

〈考え方〉

先ほどの例題3と同じようにx分後に追いつくとするとして方程式を立ててみる。

280x=80(20+x)

両辺を10で割って

28x=8(20+x)

さらに両辺を4で割って

7x=2(20+x)

7x=.40+2x

7x―2x=40

5x=40

x=8

たしかに8分後には追いつくことになるが、

8分後の距離は、家から280×8(左辺のxに8を代入した値)もしくは

80×(20+8)〈右辺のxに8を代入した値〉となり、家から2240mのところになる。ところが、最初の問題に示されたように、弟の目標の駅は2kmすなわち2000mのところにあり、この駅までの間には追いつかないのである。

よって、兄は弟に追いつくことができないのである。

 

◆以上で20年以上も前と今の教科書を比較してみた。

本質的には【追いつく問題】として共通のものとして考えられるが、前者はAの目標地点が記載されていないのに対して、後者は弟の目標地点の距離が事前に示されている。

更に後者は、上述したように問4を付け加えることによって、2kmというある意味では距離に関する変域ともいえる距離の上限を設けていることにより、解の吟味を生徒により意図的に具体的に行わせ、検証させているのである。

方程式を使って問題を解く手順の最後において、方程式の解が問題にあっているかどうか調べて書くということは、教科書に以前より記載されていたが、傾向的には、中3の2次方程式の利用において、この解の吟味の必要性がより強調されるようであり、中1・2においてはややお題目的になっていたことからみれば、この中1の教科書の問題の時代の差による表現の違い、なかんずく今の教科書の在り方は数学教育的に見て画期的なこととも見ることができる。

しかし、中1の生徒にとって、速さ・時間・道のりの問題における【追いつく問題】は、やや複雑にみえてしまう傾向があるかもしれない。

その意味で、初めから、現在の教科書の問4のような解の吟味の問題に触れる前に、かなり以前の教育出版の指導書に載っていた、前者の目標の地点が省かれている単純な問題の練習を十分行ってから、後者の現在の教科書の問4のような問題をやらせてから、解の吟味の項目に入ってみるのも、中1の生徒の理解度を十分考慮に入れるという観点からは一つの手なのかもしれない。