★中学国語【文学的文章】理解についてのヒント
(1)
神奈川県の高校入試の出題のねらいの一つは中学校での3年間に学習してきた【文章読解力】や【表現力】や【言語についての基礎的知識】など、いわゆる国語に関する基本的で総合的な力を試そうとするものと言ってよいであろう。
中でも、文章読解力においては、現代文では【小説】・【論説文・説明文】が、韻文においては【俳句・短歌】が、古典においては【古文】が、神奈川県ではほぼ毎年出題されるので、入試対策としては特にこの点に留意して学習する必要がある。
(2)
ここでは、特に文学的文章の中の小説文に限定し、面白いことがわかったので、述べてみようと思う。
たまたま数少ない例なので、一般に当てはまるわけではないということはお断りしておかなければならない。
論説文や説明文の問題についてはどんな問題でもほぼ正解を出す生徒であるが、どうも小説文だけは思ったように点が取れない。(学校のテストはその範囲をすでに学習しているので点は取れる。どの作家のどの小説が出るかわからない模擬テストや過去の入試問題のような場合、極端に小説文のところが得点が低いのである。)
そこで、小説文の問題だけをいくつも集中的にやらせて問題に慣れさせようとは、いったんは考えてみたが、「急がば回れ」ということで、わたしは、その生徒にあえてそれをやらせなかった。
短編の小説を一緒に読みながら、内容に関して口頭で、場面や主人公やその態度からどんなことが想像されるか、クライマックスはどうで、主人公の気持ちの変化はどうかなどと自由に語らせた。
そして、「君は、このお話のことをどう思う?」などと聞いてみるのだ。
特に生徒に反応がある読み物は、途中まで読者のほうも騙されてしまい、最後にどんでん返しがあるようなもの(これは作者の腕の見せ所である。)であった。
作者の罠にひっかかった生徒(わたしもその場で最初読んだときにひっかかった経験を思い出し、あえて生徒と同じようにひっかかった演技をするのである。)は、自分の思っていた結末と違っていたので、びっくりするのである。
すると、こちらで何も言わないのに、前の自分の解釈を見直すために、作者の意図によって読み違えた部分に自分で立ち戻り、そういうことだったんだといった風に自分の読みを修正し納得すると今度はニコニコしているのである。
こういう方法で授業をやると、それだけでなく、同じ作家の違う短編も読みたくなるようだ。
そこで、やや難しいと思ったが、オー・ヘンリーやサキの短編も読ませてみた。
すると、驚いたことについてくるのである。
(3)
小説文が苦手な生徒にとって、長い小説文の中の一部を切り取った文章(※もちろん本文の最初にはあらすじは短く書いてはあるが。)の中から、指示語や接続語の出題や一文を抜き出す問題はさておき、主題や文脈や心情や表現に関して何文字以上何文字以下で書けといういう出題は気分の上でかなり敷居が高いようである。
こういう場合、問題などやらずに、短編を一緒に読んでいく中で、わたしが、口頭で質問していくうちにだんだん自分の口から正しい答えを言うようになってくるのである。
その後に、それと同じ文章に私が口で聞いた問題文を作ってやらせてみると、ほぼ正解に近づいてくる。
最初の出題は、字数制限をあえてつけず、自由に大きなスペースに書かせるのである。それを、私が赤ペンで添削するのである。
そのうちに、自信をつけてくるので、今度は多少手間がかかるが字数制限を付けてみる問題をもう一度、作ってみるのである。
この段階になると本人にとって、今まで高かった敷居もだいぶ低くなってくるようだ。
それに、何回も文を読むことになるので、本人の読みも初めて文を見るときより、深くなり、どのようなことが聞かれるようになるか、だんだんわかってくるようになる。
それから、いくつかの小説文の問題を解かせてみると、案外できてきて、本人も自信をつけるようである。
それに、短編を読むなかで、最後はどうなるのかという期待もあってか、楽しみながら一気に読むので、集中力もついてきて読みもだんだん深まってくるという副産物もおまけとしてついてくる。
無理に、やらされた感じの勉強も確かに必要かもしれないが、まずは、読む楽しみから始めるのも案外近道なのかもしれない。
(4)
短編で面白そうなものを、ご家庭で読ませてみるのも試すだけの価値はあると思う。
(※注)参考文献
[1]声の教育者『声教の公立高校過去問シリーズ 神奈川県公立高校』
[2]『中学国語 学習辞典』学研 2005年
P.402~404
[3]『高校入試 重点検討 国語 総まとめ+実践問題』教学研究社
P.76~79